弟子「この町で一番偉い人は誰なんでしょう?」
師匠「それはあのお方だなぁ」
弟子「町長さんですか?」
師匠「ふふ…それは表向きではな。しかしあの町長でも頭が上がらない者がいるんだよ」
弟子「ははぁ、裏の顔役ってやつですね」
師匠「裏といっても、お天道様のもとに堂々と全身で風を切って町中を闊歩しておられるよ」
弟子「じゃあ、僕らもどこかでお目にかかっているのですか?」
師匠「ふふ…みあ~げてごらん~よぞら~のほ~しを~♪」
弟子「師匠、今は昼間ですけど…あっ!もしかしてあの黒い巨大な魚のようなやつですか?青い空をまるで海のようにスイスイ泳い
でる」
師匠「その通り。あのお方はビッグフィッシュ。あのお方の体は全て我楽多で出来ているんだよ。地上に散乱している大小さまざま
な我楽多を磁石のように吸収して自らの体を大きくしていくんだ」
弟子「では、あの方の体はどんどん大きくなっていくばかりなんですか?」
師匠「そう、お蔭さまで人間が生み出した地上の我楽多はほとんど吸い上げられて見ての通りきれいさっぱりというわけさ。放射
線を纏った物質まで拾い上げてくれるからねぇ」
弟子「しかし、そうなるとあの方は際限なく大きくなって、仕舞には町の空を覆い隠してしまうのではないですか?昼間がなくなっ
てしまう。それこそ、みあ~げて~ごらん~よぞら~のく~ずよ~♪」
師匠「ところがそうはならんのだよ。ある程度巨大に膨れ上がったらあの方は大気圏を超えて宇宙の彼方へと旅立たれることになる
。そして宇宙空間で我楽多は空中分解し、あの方の心臓つまりビッグフィッシュコアだけがこの母なる地球に舞い戻って来ら
れる。やがて再び地上の我楽多収集に従事なされるというわけなのだよ」
弟子「まさに人類の叡智を結集して生み出された最先端テクノロジー。ビッグフィッシュイノベーション!」
がらくたを あつめてこえる ビッグフィッシュ
よぞらのほしに じかいをうつして
そう吟じると弟子はモバイル端末の師匠アプリを閉じ、カバンの中から画材を取り出してフェイクタウンから依頼された壁画の制作に取りかかるのであった。
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