何やらいつもの通りがざわざわし出してきた。あちらこちらから人々が現れる。みな一つの場所に向かっている。それぞれお弁当を風呂敷で包んで持ってきたり、手ぶらでモバイルデバイスだけポケットに入れてきたり。お気に入りの服でやって来る人もいるし、大好きなぬいぐるみを大事に抱えながら現れる子供もいる。誰もが思い思いの形で今日のこの時間を過ごそうとしている。一つだけみんなに共通しているのは、そわそわとした期待と興奮で顔がどことなく笑顔なのだ。
フェイクタウンの表通りは逢魔が時。オレンジ色と紫色の譲り合いが生む特別な時間の空には、寝床に帰ろうとするカラスが黒いシルエットを揺らめかしている。カラスの退場と入れ替わるようにフェイクタウンのマモノたちがわさわさと集まってくる。普段はひょうひょうとしていたり、いたずら好きだったり、われ関せずであったり、泣いていたり、怒っていたり、まったくもって好き勝手に生活しているマモノたちである。しかし彼らもまた今日はみなうきうきとした表情を体全体から醸し出しているようだ。
表通りとはいってもそこは民家も立ち並ぶ住宅街。そんな空間に人もマモノも集まって来る。民家の窓から顔を出す人もにやにやしている。そして、集まってきた者たちはもういつものことで分かっているかのように、その場に座り込んだり、持ってきた椅子に腰かけたり、通りの向こうのブロック塀の上で並んで座って陣取る人もいる。道路の上も人々で占拠状態。マモノたちもしかり。そして彼らが集まっている場所の中心となる大きな民家のブロック塀の中に屋外照明が当たりだす。その民家の外壁に備わっている投光器も点灯する。スポットライトの中心にみんなの期待に満ちた視線が集中する。マモノたちは見切り発車で踊り始める。
やがて、楽器を抱えた一団がブロック塀の中に現れる。みな待ちに待っていましたと拍手を送る。演奏者たちは体全体に投影された服を纏う。あらゆるデザインの服を自分の体に映して着用できるウェアラブルプロジェクターを持っているためだ。そのため登場した演奏者たちはひときわ輝いている。コーラスの子供たち、そしてAIロボットの歌い手も現れなかなかの大所帯。それぞれ定位置に付く。そして取り立てて挨拶もなく音楽が鳴り始めた。ホストなんかいらない。逢魔が時が生み出す情景や集まって来る道のり、スポットライト…全てが幕開けまでの前振り。
フェイクタウンの一角は煌々と明かりが灯り、マモノたちは思い思いに舞い、音符と歌声が集まった人々の隙間を埋めていく。
今を生きていることへの祝祭。フェイクタウンフィジカルグラフィティ。
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